ギリシャ神話 / 怪物

メドゥーサ

Medusa

Μέδουσα(ギリシャ語)

見た者を石に変える怪物ゴルゴン三姉妹のひとりで、ただひとり不死ではなかった。英雄ペルセウスに首を落とされ、その首は女神アテナの武具を飾った。

メドゥーサの首
メドゥーサの首 カラヴァッジョ、1597–98年頃

メドゥーサは、髪が蛇で、その顔を見た者を石に変えてしまう怪物です。ゴルゴンと呼ばれる三姉妹のひとりで、英雄ペルセウスに首を落とされました。恐ろしい怪物の代表ですが、もとは美しい娘だったという話もあり、時代とともに見られ方が大きく変わってきた存在です。

ゴルゴン三姉妹の末の妹

ゴルゴンは、海の神ポルキュスとケトの娘たちで、ステンノ、エウリュアレ、メドゥーサの三姉妹です。古い詩人ヘシオドスは、世界の果て、大洋のかなたに住むと語りました。

姉2人は不死で老いることもありませんでしたが、メドゥーサだけは死ぬ運命にありました。ペルセウスが首を取れたのも、討つ相手がこの末の妹だったからです。

美しい娘から怪物へ

なぜ怪物になったのかについて、いちばんよく知られているのは、ローマの詩人オウィディウスが『変身物語』で語った話です。メドゥーサはもともと、多くの男たちが求婚するほど美しい娘で、とくに髪が見事でした。ところが、女神アテナの神殿で海の神ポセイドンに辱められてしまいます。神殿をけがされたアテナは怒り、罰としてその美しい髪を蛇に変えました。

ひどい目にあったメドゥーサのほうが罰せられるこの筋は、今の読者にはとても理不尽に感じられるでしょう。近年は、メドゥーサを被害者として読み直す小説や作品も生まれています。

ただ、これはすべての言い伝えに共通する話ではありません。ずっと古いヘシオドスの詩では、メドゥーサは花の咲く野原でポセイドンと結ばれたとされ、神殿も罰も出てきません。アテナと美しさを競ったから、という言い伝えもあります。

メドゥーサの発見
メドゥーサの発見バーン=ジョーンズ、1888年Staatsgalerie Stuttgart / Wikimedia Commons (Public domain)

首を落とされる

島の王に命じられてやって来たペルセウスは、ゴルゴンたちが眠っているところを見つけました。じかに見れば石になるので、磨いた盾に映した姿を見ながら近づき、女神アテナに導かれて首を切り落とします。

すると、その切り口から、翼のある馬ペガソスと、黄金の剣を持つクリュサオルが飛び出しました。どちらも、メドゥーサとポセイドンの子でした。目を覚ました姉たちは追いかけましたが、ペルセウスは姿を消す帽子をかぶって逃げのびました。

メドゥーサの死
メドゥーサの死バーン=ジョーンズ、1888年Staatsgalerie Stuttgart / Wikimedia Commons (Public domain)

死んでも力を失わない首

首は、切り落とされたあとも人を石に変える力を持ち続けました。ペルセウスは帰り道、自分を追い返そうとした巨人アトラスをこの首で山に変え、敵たちも次々と石にしています(くわしくは「ペルセウス」)。

オウィディウスによると、首から滴った血は、リビアの砂漠で毒蛇になりました。首を置いた海草が固まって、珊瑚になったともいいます。別の話では、メドゥーサの血は女神アテナから医術の神アスクレピオスに渡され、片方の血管の血は人を殺し、もう片方の血は死者を生き返らせたとされます。

魔よけになった顔

役目を終えた首は女神アテナに捧げられ、アテナはそれを、胸や肩を守る武具アイギスの真ん中に付けました。敵をにらみつけて追い払う顔というわけです。

こうしてメドゥーサの顔は魔よけになりました。古代ギリシャでは、神殿の飾りや盾、杯などに、目をむいて舌を出した恐ろしい顔が描かれています。この顔は時代が下るにつれて美しい女性の顔へと変わっていきました。現代でも、ファッションブランドのヴェルサーチェのロゴに使われています。

絵の中のメドゥーサの見分け方

  • 蛇の髪:いちばんの手がかりです。髪の毛の一本一本がうねる蛇になっています
  • 切り落とされた首:絵では、首だけの姿で描かれることがほとんどです
  • 盾の上の顔:丸い盾の中央の顔は、メドゥーサの首、またはそれを写したものです
  • 翼:古い言い伝えのゴルゴンには翼があり、絵でも翼のある姿で描かれることがあります
  • そばの若者:翼のサンダルの若者が一緒にいれば、英雄ペルセウスです

カラヴァッジョの『メドゥーサの首』は、絵そのものが木の丸い盾に描かれています。実際の盾のように作られ、メディチ家の当主に贈るためのものでした。叫ぶ口を開けた顔は、画家自身の顔を写したともいわれます。切り落とされた瞬間の驚きを見せる、怪物というより人間の顔です。

バーン=ジョーンズの連作のメドゥーサは、まるで違います。翼のある姉たちのそばに布をまとって立つ姿は、怪物というより悲しむ人のようです。最後の場面では、ペルセウスが恋人アンドロメダと水盤をのぞき込み、水に映した首を見せています。

不吉な首
不吉な首バーン=ジョーンズ、1885年Southampton City Art Gallery / Wikimedia Commons (Public domain)